最高裁判所第三小法廷 昭和31年(あ)731号 判決 1958年2月04日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人佐藤義弥の上告趣意第一点について。
いわゆる親族相盗の関係を定めた刑法二四四条に「……二百三十五条ノ罪及ヒ其未遂罪……」とあるのは「窃盗罪及びその未遂罪」の義にほかならないから、特別法に定める窃盗罪についても格段の定めがないかぎり、その適用を除外すべき理由はない。そしてまた森林法一九七条に定める森林窃盗罪は、刑法に定める窃盗罪に比し法定刑において軽く定められているけれども、そのことをもって直ちに右刑法二四四条の適用を否定する理由とするに足りない。されば本件被告人の森林窃盗の罪について刑法二四四条の適用がないとした原審の解釈は誤りであって違法たるを免れず、所論掲記の判例違反の事由あるに帰する。しかしながら原判決の確定するところによれば、本件について適法な告訴の存することが明らかであるから、刑法二四四条を適用するとしても、被告人の刑責に消長を来たすものではなく、原判決に影響を及ぼさないことが明らかである。それ故所論は結局採用できない。
同第二点について。
所論は、単なる法令違反の主張であって刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。(なお刑法二四六条の詐欺罪は、必ずしも犯人の欺罔行為によって錯誤に陥った他人から、犯人自身財物の交付を受けることを要するものではなく、これを第三者に交付せしめても成立すると解すべきものである。所論は独自の見解であって採用できない)。
同第三点について。
所論は、量刑不当の主張にすぎず、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。
その他記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)